開業準備

開業に必要な周辺機器として

  • 電子カルテ
  • 受付システム
  • 予約システム
  • 問診システム
  • ホームページ 
  • 会計業務

これ以外にもエコー検査、内視鏡などの備品はあるが共通して必要となる周辺機器としてはこれくらいかである。

電子カルテ

ひと昔前の電子カルテはオンプレミス型と言われる院内にサーバーを設置するタイプがほとんどだった。メリットとしてカスタム性に優れていることで、そのクリニックだけに必要とするローカルルールなどを設定することができる。バイタル測定したときに記載する位置、項目、順番など。デメリットとして、5年ごとサーバー交換が必要、診療報酬改定ごとに保険点数の書き換え、サーバーにつなげるPCごとに使用料がかかる、ネットに繋がっていないため調べものをする際に別のPCで検索する必要がある。最近ではランサムウェアというコンピューターウイルスが病院のサーバーを乗っ取り、金銭を要求するような事件もあったように、院内サーバーのセキュリティーを常に強化しておく必要がある。だからと言って紙カルテに逆戻りするなど考えられない。

次に、クラウド型電子カルテについて。メリットとしてコストが圧倒的に安いこと、インターネットに繋がる環境があればどこでも電子カルテを閲覧できる(各社承認システムが導入してあるPCであれば)。タブレットで閲覧、記入が可能。カルテ以外の周辺機器との連携が可能などいろいろなメリットがある。デメリットとしてネット環境がないと使えないことぐらいである。

これまでに比較検討したクラウド型電子カルテは以下の3つ。

正直、これ以外にもたくさんカルテメーカーがあるが見切れないのが本音である。

クラウド型電子カルテの場合、レセコンが一体型となっているタイプ、日本医師会標準ソフト「ORCA」と連携するタイプがある。

一体型のメリットとして同じ画面で患者の個人情報を入力し受付ができること、カルテもすぐ確認できるため「次回採血」や「次回家族に説明が必要」などの医師記載を受け付け時点で確認することができる。デメリットとして「自動算定機能」がいまいちな場合がある。本来とれないコストを追加しようとしたりその逆もあったり、骨粗鬆症検査などは4カ月に1回しか算定できない場合アラート機能がないこなど。それほど煩わしいことはないが、この辺はまだ発展途上である。2022/4/20現在

ORCA連動型のメリットとして、以前よりクリニックでORCAを利用している場合はデータ移行が簡単、一体型と比較すると自動精算機、予約システムと連携できるメーカーが多い、歴史が長い分この辺はORCAに軍配が上がる。しかし、各社メーカーも一体型と連携できつつあるため今後に期待したい。デメリットとしてORCAを導入すると電子カルテとは別に導入費用、維持費用がかかってくることである。

基本的にどのクラウド型電子カルテも採血などの外注検査会社、画像取り込みなどは連携可能なためここでは比較できない。

ここで独断と偏見でカルテの評価をしたい

まず、CLINICS(クリニクス)電子カルテ(ORCA内包型)について

費用について、初期費用は有料としか記載がない。実際見積をしてみないとわからないがキャンペーン期間、オンライン診療も同時に申し込むかによって若干の差があるため、ここでは実際に見積もって頂いた金額の掲載は控えたい。維持費についても40,000円/月とかなり高い。

地方で開業する場合はサポート体制が重要となる。初期設定は実際にメーカーの方が来るため出張代、人件費がかかってくる。一度導入してしまえば遠隔操作で対応してくれるが、営業時間にも注意が必要。クリニックによっては夜19時まで診療していたり、土日も診療している場合がある。しかしサポートの営業時間外だと対応してくれない場合があるため事前に確認が必要。代理店が多いカルテメーカーだと有利だが、都内のみにしか営業所が無い場合は厳しい。

操作性については好みがあるため実際にデモを体験することをおすすめします。

推奨環境はWindows、Macの両方可能だがタブレット端末が利用できないことがデメリットとしてある。例えばワクチンの予約確認、受付などスタッフが確認するデバイスとしては持ち運びやすいタブレット端末は重宝する。患者さんの目の前に持っていって予約受付することもできる。ここが導入に躊躇したところです。

オンライン診療もコロナ禍で飛躍的に成長した分野かと。クリニクスのオンライン診療アプリはダウンロード数も多く周知されている。オンライン診療については別ブログで詳細を記載したいと思います。

総括すると維持費が高いサポート体制に難あり(地方で開業する場合)、タブレット端末で使用できない。オンライン診療はよく知られているが。

次にM3デジカル(レセコン一体型)について

当院ではもともとORCAを利用していなかったため一体型を検討した。ORCAを使用している場合は連携型もありだと思います。

ホームページ上で初期費用0円と記載してありますが、これは直接M3デジカルに導入を依頼した場合であり、代理店に依頼した場合は別途費用がかかります。維持費についても19,800円/月とクリニクスと比較すると安いです。ただし、1,2年目は固定だが3年目以降は以下のようになります

19,800円+10円/回(3年目以降は、1ヶ月で1000回受付超える場合、10円/回を加算)
※1日80人,月2000人の場合:19,800円+(2000人-1000人)×10円=29.800円

これもキャンペーン期間中は安くなったりするため確認が必要。1日80人来院するクリニックは限られていると思いますが。

デジカルは代理店が比較的多くサポート体制が整っていますが、地方によりばらつきがあるため確認が必要です。あと、どのカルテを導入するときにも重要になることとして。

  • ネット環境(光回線1G以上)
  • LANケーブルのカテゴリー(5e以上)
  • LANケーブルが各診察室、受付、検査室、エコー室、内視鏡室などに配線があるか

新規開業の場合は初めから設定できるが、途中でクラウド型電子カルテを導入する際は事前に確認しておく必要がある。この辺の作業はカルテ業者ではなく電機メーカー、クリニックの配線を請け負った業者に依頼する必要があります。wifi接続はお勧めされません。

オンライン診療も検討しており、Lineドクターと連携するような話がありましたが進展はなさそうです。

こちらはタブレット端末で閲覧、カルテ記載が可能。

予約管理画面が非常に使いにくいです。曜日、時間で予約人数を管理したり、内視鏡、ワクチンなど特定の枠を作成することができない。またクリニクス、クリアスの場合はオンライン予約に対応しているが、デジカルはなし。カルテ機能に特化しており、オンライン予約などを検討する場合は別のシステムと連携させる必要がある。

最後にCLIUS(クリアス)です。

正直、地方ではなく関東近郊で開業する場合は一番バランスがいいカルテだと思っております。

理由として

  • 導入コスト、維持費用が安い
  • オンライン予約、オンライン診療、問診機能、出退勤管理(ジョブカン)が無料でついてくる
  • カルテ同時編集に対応している

以上がある。電子カルテと連携させたい機能をほぼ網羅しているところがいいですね。電子カルテにない機能を追加するとタコ足配線のようになってしまい、さらにコストの負担も大きくなる。クリアスでない機能としたら受付順番待ち機能だが、ここは上記で説明した「Air wait」と連携させることで解消できそう。呼び出し機能もありますし。

クラウド型電子カルテを導入しているクリニックだとしばし経験するが、カルテ編集途中に別のスタッフが保存すると、カルテを書き終わった後に保存ボタンを押しても「編集中に誰かが保存したため内容を保存できません」となってしまう。つまり、一人の患者さんを同時編集ができない、これが結構忙しいときに起こるとキツイ。その点、編集中に誰かが保存してもさらに上書き保存ができるため便利な機能だと思います。

都内で開業予定の場合はクリアスを選んでいたと思います。

クラウド型電子カルテの導入を検討されている場合はデモを行うことをおすすめします。一度メーカーに問い合わせてみてください。

受付システム

導入を検討したい事ととして

  • デジタル診察券
  • 自動受付システム
  • バーコード、QRコード管理
  • スイカなどICチップに診察券情報上書きする
  • 顔認証

デジタル診察券は最近話題となっている。現在、スマートフォンはほとんどの方が持っているため利用価値はある。ただし、地域差、年齢により使いこなせる方がどれくらいいるかは導入前に検討が必要である。高齢者を中心として慢性疾患を診ているクリニックには不向きであろう。その辺はアナログ世代が多くデジタルにしたことで逆に受診控えが起こりそうだ。逆に美容、レディースクリニックなどは比較的デジタルの導入に抵抗がないことが多い。ただ、最近アプリがが多く新しくインストールして個人情報を入力してなどはかなり手間がかかるため嫌煙される可能性がある。iphone osをアップデートしてくださいと言われても、いつまでも拒否しているように。使っていない夜中でもそれを許さない。

自動受付は予約管理や自動精算機とセットになっている場合が多い。受付だけをやりたい場合はショップ向けのシステムがいいだろう。リクルートから出ている「Air wait」などはコストも安いし直感的に操作できるため使いやすい。順番待ち機能もある。一番使えないと思ったのが自動精算機、予約管理とセットになっている場合だ。受付したときに精算している人、予約を迷っている人がいたら行列ができてしまい流れが悪くなってしまう。アナログ世代が中心なクリニックであればさらに行列が伸びること間違いなしだ。それを利用して人気を装ってもいいだろう。

バーコードやQRコードは比較的導入しやすい。現在使用している診察券にバーコードを添付すれば、次回よりバーコードリーダーで読み取りできるためスムーズに行える。予約、呼び出しシステムと連動しているメーカーが多いためこちらも実際に問い合わせてみるといい。

スイカを利用したシステムについては一度検討したが、コストがかなりかかること、お財布携帯としてスイカもデジタル化が進んでいること、スイカを持っていない方も多いことから参考までに。

顔認証については会社の出退勤、フィットネスクラブの入退室などで導入されている。メリットとして入った瞬間に受付、体温測定が同時にできることがある。ただ、今後はオンライン資格確認システムがすすむとマイナンバーカードで顔認証ができるためどちらの進化が早いかによる。オンライン資格確認システム導入率、マイナンバー普及率は低く、また健康保険証との紐づけは数%程度とのこと(2022/4/20現在)。今後に期待したい。見たい聞きたい歌いたい。

予約システム

「待ち時間」が長いことストレスにつながる。

待つ状況として、受付から診察までと会計が多いと思います。この受付から診察までの時間をできるだけ短縮することでスムーズに誘導でき一番大事な「診察」に時間をかけることができる。

オンライン予約システムはどこも導入を検討するかと思いますが、これもいろいろなメーカーがでている。

オンライン予約、オンライン予約+順番待ち、

問診システム

受診前にある程度患者さんの状態を把握するメリットはある。一度デモを行った経験からすると5-6個の質問であれば何とかなるが、それ以上になると「めんどくさい」と思ってしまった(自分の場合は)。簡易な問診ならOK。電子カルテに備わっている場合はその機能のみでも十分な気がする。

ホームページ

こちらも昔は業者に依頼して数百万支払うのが当たり前だった。文章を編集したり、ページレイアウトを変更したり、写真を追加したりするたびにコストがかかった。

現在、ノーコードでいろいろなことができるようになった。もちろん専門知識は必要ない。ワードプレスの操作方法だけ分かっていれば自院ホームページ作成からカスタムまで自由自在である。

必要となるのは

  • レンタルサーバー契約
  • ワードプレステンプレート
  • 写真、ロゴなど

これだけ。

レンタルサーバーは非常に安く契約できるため維持コストもかからない。契約してからすぐにワードプレスが利用できるサイトもあるため是非利用してほしい。

ワードプレスに入っている外観だけだとふつうのブログのようなデザインになる。この記事もワードプレスで作っているが。いろいろカスタム性に優れたテンプレートを購入することをおすすめする。数万円程度で結構いいやつが買えてしまう。後は自分で写真をはめ込んだり、お知らせページにTwitter、インスタグラムをはめ込んだりしてカスタムすることができる。この辺が難しいという人は数十万程度かかるがwebデザイナーなどに相談してもいいだろう。

写真はクリニックの外観、内装、スタッフ紹介で必要となる。ここはプロに任せた方がいい。今は仕事マッチングアプリなどでプロのカメラマンにお願いすることは容易である。ロゴはデザイナーに依頼するのが無難である。

材料が揃わなくてもホームページは作成できるため開業を決めたらすぐにとりかかろう。

会計業務

クリニックの運営で一番時間をかけたくない所と言ったらここだろう。

そこでおすすめなのが

  • 自動精算機(精算機能のみ)
  • キャッスレス決済
  • 後払い決済

自動精算機は前述したとおり精算機能のみをおすすめします。こちらも導入予定の電子カルテのレセコンと連動するかどうかは事前に確認しておく必要です。ORCAの方が連動しているメーカーが多いです。自動精算機は数百万かかり、保守費用として毎月数万円かかる。こちらも各メーカーに問い合わせして確認が必要です。

現金をあまり使わなくなった方も多いと思います。病院は昔から現金主義なところが多くIT化が遅れている。それでもキャッシュレス決済を躊躇する理由に手数料が大きく関わってきます。クレジットカードの場合は3.5%前後、キャッスレス決済(スイカ、paypay)など2.0-3.0%程度かかる。保険診療のみしているクリニックの場合は、患者負担額に対する手数料なのでそれほど負担にならないが、自費診療を行っているクリニックの場合は大きい。現在、確認できる中で日本医師会ORCA管理機関が提供しているサービスが安い。下記確認を。

https://www.orcamo.co.jp/products/cashless.htmlより引用 2022/4/20

検討してみたい。もちろん連動するかどうかは事前確認が必要。

後払い決算にはアプリでクレジットカードを事前登録しておく必要があったり、請求書を郵送し銀行またはコンビニから振り込む場合などがある。オンラインショップなどで利用していることが多い。何度か受診歴のある再診の方なら後日まとめて受診時に請求することが現実的かな。

オンライン診療を予定している場合は診療項目に「後払い専用」の予約枠を作り、受診前に予約してもらう。受診後、会計結果をオンライン診療の会計システムを利用して請求することで後払い決済が完了する。問題点としてはカルテとオンライン診療が別々のメーカーの場合、手動で個人を紐づけないといけないため間違える可能性があるため注意が必要。

まとめ

まず、自分が何をやりたいかシュミレーションしておくことが重要だと思います。

キャッシュレスを導入したが結局みんな現金で会計を済ませてしまう、こだわった問診表を作成したがだれも利用してくれない、シームレスにしすぎて受付と患者さんの会話がほとんどなく温かみがないなど。

知り合いの先生で実際に使っているカルテがあるようなら相談するのが一番かもしれない。

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